闇に香る嘘 あらすじ感想

闇に香る嘘感想1

 

 

闇に香る嘘 60回江戸川乱歩賞受賞作を文庫本で読みました。

 

 

満州で生き別れた中国残留孤児である兄など設定が難しそうに感じるが、ミステリーとしてサクッと読める。

 

 

ラストの真相がもたらすカタルシスを追体験できる作品。

 

 

ここに注目して読むべきというポイントを紹介します。

 

 

 

闇に香る嘘ネタバレ無し感想

 

闇に香る嘘感想2

 

 

この小説を読んでいて面白いと感じた点は、この小説の最大の売りであるトリック以外の部分でいえば、やはりタイトルにもある「闇」から来る嘘の部分。

 

 

この小説は目が見えない主人公の一人称視点で物語が終始進みます。

 

 

 

 

複数の登場人物の視点から様々な角度で物語が語られ一気に収束していくタイプの小説も面白いですが、今回は主人公が盲目であることが大きなポイントなので常に主人公視点で物語が進みます。

 

 

 

60代の老齢で視覚障害者の一人称で進む物語という設定はなかなか他にない設定なのではないでしょうか。

 

 

 

主人公は生まれながらにして盲目なわけではなく、四十歳くらいまで目が見えていてカメラマンをしていました。

 

 

 

その後徐々に視力を失い、やがてまったく視力が無くなってしまうのですが、その間の心境や行動・恐怖・ストレス、家庭に与える影響など丁寧に描かれていると僕は感じました。

 

 

小説の中の風景に関する描写やの多くは彼が目が見えていた頃の記憶がもとにはなっていると思われるので読んでいてい違和感はありません。

 

 

 

物語自体が「見えない」ことが前提で成り立っているので、見えている人からすればなんでもない場面でも独特の緊張感が常にあります。

 

 

例えば、誰かと面談する場面です。

 

闇に香る嘘面接

 

盲目の主人公からしたら何が目の前にあるのか、目の前の人物は本当にその人なのか、声や音でしか判断出来ない主人公が確信を持って断定できることはあまりにも少ない。

 

 

 

中でも僕が一番体験したら怖いだろうなと感じたのは、人が近くにいても息を潜めていたら気が付かないかもしれないという場面です。

 

 

小説に出てきた例を出すと、ある人物と面談をしているときふいにタバコの匂いがする。

 

 

目の前の人物はタバコも吸っていないし、その人の服や息からはタバコの匂いを感じなかったのでに面談の最中に急にタバコのにおいを感じる。

 

 

それは、面談の前から他の人物が同席していたのかもしれないことを意味します。

 

 

また家の中に誰か侵入したような形跡が合った場面でも、その人物はまだ家の中に潜んでいるかもしれないが主人公にはそれを確かめる方法があまりにもすくない。

 

 

手探りで周囲を探すか、微妙な気配や音などに細心の注意を払い周囲に人がいないかを探らなければいけない。

 

 

この見えない恐怖は相当なものだろうなと思うわけです。

 

 

闇に香る嘘ネタバレ無し「あらすじ」

 

闇に香る嘘あらすじ

 

目が見えない主人公だからこそ成り立つ状況がたくさん出てくるのもこの小説の特徴の1つですが、その最たるものが4歳の頃に生き別れた「兄」が本物なのかという物語の根幹となる疑問。

 

 

兄は満州に残された残留孤児で、中国人に育てられ40年後に日本に帰国します。

 

 

再会した時には主人公は目が見えなくなってしまったので、帰国した兄が本当に生き別れた兄かを”見て”確かめることができません。

 

 

 

主人公が兄を本物だと確信するに至ったのは、兄の背中に刀で切られた古傷があったことと、母が帰国した兄を自分の息子だと認めたこと。

 

 

 

しかし、兄が別人なのでは?という違和感が付き纏っていたことを主人公は徐々に思い出していきます。

 

 

 

しかし、その違和感は本当に以前から主人公が感じていたものなのでしょうか?

 

闇に香る嘘感覚

 

兄を疑うきっかけとなったのは主人公の孫娘の腎臓移植のため、唯一の親族である兄の腎臓適合検査を兄にお願いしたものの、断固拒否されたからです。

 

 

1つを疑えば他も怪しく感じることがありますよね。

 

 

そういえばあれもこれも怪しいと1つ疑惑が見つかれば、いままでは気にならなかった点もおかしく見える。

 

 

主人公は目が見えないので五感のうち視覚を除いた4感を頼りに生きています。

 

 

匂い、音、味、感触を通じて得られる感覚はもしかすると普通の人よりも優れていて感覚的に兄が偽物だと感じることもあるでしょう。

 

 

しかし、小説に描かれている兄への違和感は、満州にいた頃の記憶では優しい兄だったのに、帰国したら自分勝手な人間になっているという違和感であり、久しぶりに兄に再会したら、自分の感覚が兄が実は本物の兄ではないと”感覚”的に感じたというニュアンスではないように僕には思えました。

 

 

確かに兄弟の孫娘が重篤な病気で移植が必要なのに、適合検査すら受けようとしないのは兄の存在を疑う理由になるのかもしれません、生き別れて40年ぶりに再会した兄弟であれば偽物なのかを疑うきっかけになるかもしれません。

 

 

この違和感がどこから来るのか物語における重要なポイントです。

 

闇に香る嘘33

 

 

主人公は中国にいたころの兄や自分を知っている人物や兄が帰国するために手をつくしてくれた人物を訪ねあらためて兄の人生について話を聞くことで、自分の記憶との接点を見つけようとします。

 

 

ただし、主人公の記憶は正確ではありません。

 

 

 

中国にいた頃の主人公は4歳。

 

 

思い出そうとしても思い出せることには限界がある。

 

 

また、主人公は精神安定剤を常用していおり、さらに酒で薬を流し込んでいるため現在の記憶もあやふやで、ところどころ記憶が飛んだりしているため、自分の行動の記憶が曖昧です。

 

 

記憶にはないけど知らないうちに取っていた行動があるかもしれない。

 

 

この点が物語の大きな伏線になりそうな感じなんですよね。

 

 

 

自分が話を聞いて回っている満州に住んでいたころの兄や主人公や母をしる人物の証言はバラバラです。

 

 

そもそもその人物が本物かどうか主人公は確認するすべがない。

 

 

自分の行動の記憶も確信がもてない。

 

 

ようするに何もわからない状況のなかで、どのように真相にたどり着くのかという物語です。

 

 

この小説はミステリーなのでトリックがあって謎解きがあるのですが、単純に事件が解決しました終了という物語ではなく、登場人物全員に共通しているある思いがあると僕は思っています。

 

闇に香る嘘希望

 

それは生きていくために必要な光は何かという問いのような気がします。

 

 

かつてアウシュヴィッツに投獄されていた心理学者のフランクルは、死ぬことが当たり前という絶望的な状況の中でも希望を失わず人間としての尊厳を持ち生き延びた人たちの特徴の1つをこう述べました。

 

 

「誰かから必要とされている人生を生きている人」

 

 

自分にしかできない仕事を持っている、自分の帰りを信じて待っている人がいると自分の人生に自分で意味を見いだせる人が生き残ったそうです。

 

 

 

困難な状況に陥ったとき僕たちは、

 

 

「こんなはずじゃなかった」
「こんなことなったのは○○のせいだ」

 

 

と思いがちです。

 

 

しかし、それでは先に進めない。

 

 

困難に打ち勝ち、何かを得るためにまずするべきことは何か、それは「闇に香る嘘」で主人公がどのような行動をし、何を感じ、何を変えたのかを読めばヒントになるかもしれません。

 

闇に香る嘘 パクリについて

 

ロバート・ゴダードの「闇に浮かぶ絵」のパクリではないかという批判?感想があるようです。

 

 

 

僕は闇に浮かぶ絵を読んでいないので内容に関しての回答はできませんが、ざっと調べた感じでは「行方不明となっていた兄」という設定以外はまったく別の作品であり、パクリ批判を受けるような作品ではないという印象を持っています。

 

 

「闇に浮かぶ絵」死んだはずの人物が生きていて数十年後に後継者として出て来るという作品のようなので、僕はふと犬神家のスケキヨを思い出しました笑

 


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