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東野圭吾さんの「片想い」が実写化され、WOWOWのドラマWにて2017年秋に公開されるので原作を読みました。

 

 

実写化されるにあたって原作者東野圭吾が「ついにこの作品に挑む人たちが現れたのか」とコメントしていますが、実写化するにあたり何が難しいのか読んで感じたことをまとめました。

 

 

多分原作と映像では結論も含めた詳細に多少の変更があるでしょうから、片想いというタイトルの意味が判る原作のラストを含めた物語の流れを掲載しています。

 

 

後半は完全ネタバレなので、原作の内容を知りたくない方は閲覧に十分に注意してください。

片想い 登場人物

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氏名/現在の職業/帝都代アメフト部時台のポジション

 

日浦美月:OL退社後結婚子供が一人いる 女子マネ
西脇哲郎:スポーツライター QB(クォーターバック)
須貝:損保勤務 キッカー
安西:ラインメン
中尾:食品会社 ランニングバック
松崎:ワイドレシーバー
早田:新聞記者 タイトエンド
西脇(高倉)理沙子:カメラマン 女子マネ
神崎:コーチ

 

広川:美月の夫
戸倉明雄:家を出て男性として働いていたバーのホステスをストーカーしていた男。美月は彼を殺したと告白する
佐伯香里:戸倉がストーカーしていたホステス

 

 

望月:刑事

 

 

登場人物に関するメモ

 

 

理沙子はアメフト部のアイドル。

 

 

中尾と美月は学生時代に交際をしていたが、美月は自分の心が男であることは中尾に隠して交際した。

 

 

交際終了後も二人の関係は良好であり、友人としてお互いのことを大切に思っている。

 

 

広川と美月の関係は、美月が広川に自分が女を演じていることの負い目を感じている。

 

 

美月は、性生活などを拒否する代わりにパートナーとしての役目、母親としての役目は完璧にこなすことを誓う。

 

 

広川もそんな美月を男同士で過ごしているような快適さを感じ、妻への不満はなく、失踪後も妻の行方を追うが、なにか理由がありそうな雰囲気。

 

 

 

 

 

理沙子と哲郎と学生時代から交際しており、そのまま結婚した。

 

 

 

美月は学生時代から理沙子に恋をしていた。

 

 

美月は理沙子が哲郎に心底惚れいているのを痛感し、理沙子に告白することを諦め、本当は男であることも諦めるために哲郎を誘い一夜だけの関係をもつ。

 

 

そうすることで男である自分と決別し、女になる決心ができると考えたから。

 

 

以上が冒頭部分で描かれている登場人物に関する記述です。

 

 

 

片想い実写化に対する個人的な感想

 

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本作中に何度も出てくるのは様々な人物が感じる美月の「やっぱり女だ」という部分。

 

 

美月は性同一性障害である可能性が非常に高く、自分の身体と心の性が一致しない。

 

 

美月は男になりたくてなりたく、努力して男になれたと考えている。

 

 

 

男になりたい人が精一杯自分の考える”男”を生きているのに、周囲はどこかその仕草・表情・雰囲気から女を感じてしまう。

 

 

これを演技で、演出で表現できるのか?中谷美紀さんは非常に難しい役柄を演じることになります。

 

 

 

美月が殺人を告白し、哲郎と理沙子の家で匿われることになります。

 

 

美月は男性ホルモンを打っているので、髭がうっすら生えてきて筋肉もつき男性らしい身体を手に入れることができていたのですが、警察がもし美月の存在に気が付いたならば、ホルモンを注射する病院をマークすると考え、ホルモン注射を止めます。

 

 

徐々に徐々に美月の体が男から女に戻っていきます。

 

 

それ肉体的な変化なので当然起こるべくして起こることなので予想もできるし、対処もできる。

 

 

髭がうっすら生えるほど男性的になっている美月が徐々に女性に戻る点は女性が演じるので問題ないでしょう。

 

 

しかし難しいのは、ふとした表情・仕草・着ている服装や光のあたり方によって生まれる陰影など日常生活における些細なことからも、ふとした瞬間に美月が男ではなく女であることを哲郎を始めとした登場人物が感じる点を映像でどのように表現・または演技するのかです。

 

 

例えばこのような場面があります。

 

 

美月の父親に哲郎が会いに行く場面で、父親が哲郎と別れ際に美月が編んでくれたマフラーの話になります。

 

父親は美月自らがマフラーを首に巻いてくれたときのことを思い出し、そのときの表情はどうみても女そのもだったことから「私はいまでもあのこは女だと信じていたい」と哲郎に告げます。

 

 

そして哲郎も言葉にはだしませんが「僕も同じだ」と思います。

 

 

哲郎を誰が演じるのかはこの記事を書いている時点では発表されていませんが、このシーンがもし映像化されるのであれば哲郎の演技もまた難しいでしょう。

 

 

 

哲郎は美月と一度男女の関係を持っていることから、性の対象として美月を感じてしまう瞬間に自己嫌悪を感じたりします。

 

 

口では男同士の話し合いだと、美月が男であることを認めて(彼女の個性を尊重して)いるにもかかわらず。

 

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物語は哲郎の視点で進行していくので、文章で自分の心境を説明することができますが、映像化される場合ナレーションを入れない限り心境を演技や演出で”表現”しなければいけません。

 

 

微妙な心境をどのように映像化するのかが非常に難しい作品になるでしょう。

 

 

片想い 原作ラスト ネタバレ

 

 

以下、 原作ラストのネタバレを書いていきます。

 

 

内容を知りたくない方はここで記事を閉じてください。

 

 

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美月は自分が男になり偽名を使ってバーテンダーとして働いてる

 

 

そこのホステスである香里がストーカー被害に合っている事実を知り、営業後は送ったりしていたが、香里の動向を常にチェックしている戸倉からのストーキングがエスカレートし、ついに戸倉を殺してしまう。

 

 

美月は警察に自首する前に哲郎と理沙子にひと目会いたくなり、彼らの前に姿を表し、殺人を告白する。

 

 

理沙子と哲郎とその場にいたアメフト仲間の須貝は本当は男であることをずっと自覚していたが女として人生を送らねばならず、ずっと苦悩していた美月がようやく男として人生を新しい人生を歩き始めたばかりなのに、事件を起こし刑務所でまた女として(戸籍が女なので)過ごさねばならないことや、かつての仲間を殺人犯にしたくないなどの思いから美月を匿う決意をする。

 

 

しかし、新聞記者である早田に須貝が事件の情報を得るために美月の存在を隠したまま接触したが、逆に早田は何かがあると怪しんで独自に調査を開始する。

 

 

美月は大学時代に交際していた中尾とも再会するが、その再会後美月は失踪する。

 

 

美月が失踪したことに責任を感じた哲郎と理沙子は自分たちの力でもう一度美月を探し出して、彼(彼女?)のちからになるために独自に調査を始める。

 

 

美月を探すためにストーカー事件の関係者であるホステスの香里の行方を追ううちに、香里はまったくの別人がなりすましていたことが判る。

 

 

本物の佐伯香里は現在男として生活していたのだ。

 

 

さらに調査をしていくうちに本物の佐伯香里は女に産まれたが心は男、そしてホステスの香里は男に産まれたが心は女である立石という人物であることが判る。

 

 

そして、この二人はお互いの戸籍を交換してそれぞれ自分の本当の性別だと考えている性になって新しい人生を送っていた。

 

 

哲郎は調査によって性同一性障害などの身体の性と自意識の性が一致しない人びとが戸籍をお互いに交換しあうシステムを作ろうとしていることを知る。

 

 

そのシステムにホステスの香里が絡んでいること、そして美月もそのシステムを利用して新しい人生を送ろうとしていたことが判る。

 

 

しかも、そのシステムを作ろうとしていたのが美月の学生時代の恋人である中尾。

 

 

一方新聞記者の早田は事件と美月との関係を知らずに独自の調査で、実は被害者家族である戸倉の嫁と戸倉の母が犯人を脅迫している事実を突き止める。

 

 

哲郎も戸倉の家族を調査している中で、戸倉家族と中尾に接点があることを知る。

 

 

哲郎と早田はお互いに知り得た情報を交換する中で、事件の中心には中尾がいることを確認する。

 

 

哲郎は美月を発見し、美月の口から事件の真相を聞く。

 

 

なんと戸倉を殺したのは中尾だった。

 

 

戸倉は香里をストーカーしていく中で、香里のゴミをあさり美月や香里、立石などの戸籍を発見していた。

 

 

戸倉は美月が男性ではなく女性であることを戸籍で確認し、常に香里を守っている美月の存在を邪魔だと思ったのか、女なのに男の格好をしている美月に興味をもったのかは理由は不明だが、美月に襲いかかるが、そこに中尾が表れ、状況を把握した中尾は戸倉を殺してしまう。

 

 

中尾は膵臓がんで余命あとわずかであることから、彼が誰にも迷惑が掛からない状況で自ら死を選ぼうとしていることに気がついた哲郎達は中尾を追う。

 

 

中尾は中尾としてではなく、中尾は自分が作った戸籍システムによって産まれた架空の人間として死ぬことで戸倉の事件を収束させ、かつ美月や香里や立石など戸籍を変えて自分の本当の性で新しく人生を生きようとしている人達を守ろうとしていると哲郎は推測する。

 

 

中尾を見つけ彼は哲郎に自分の母親が身体は女だけど心は男であったことを小さいときに告白されていたことを話す。

 

 

中尾はそれから人の性別というものが簡単に測れるものではないことを学び、その人の性をじっくりと偏見なしに見続ける癖がつき、見た目の性と本当の性が異なる人を完全に見分けられるようになっていた。

 

 

その中尾がなぜ学生時代に美月と交際していたのか?それは中尾からみれば美月は女性だったからだ。

 

 

 

中尾は誰にだった自分の中に異性っぽい要素はあるはずだと言う。

 

 

でも普通の男女は、異性の部分がごくわずかしかないから少し異性側によってしまう日やタイミングがあっても大した影響はないが、美月はちょうど男女の性のちょうど中間に位置しているので、どちらかに揺れ動くだけで自分の中の違和感が大きくなってしまう。

 

 

会う人や場所によって男性っぽくなったり、女性に傾いたりしてしまうので美月の性に関しては人によっては男と感じるひともいれば、女と感じる人もいるのは美月自身は自分がそういう性の特性を持っていることに気がついていないから産まれる違和感なのではないかと推測する。

 

 

「美月は自分では身体が女で心が男だと思っている、だから身体を男に変えれば自分の本当の性になれると思っているがそれは違う。美月は時として男であり、女でもある。だから身体だけ男にして戸籍も男にって第二の人生を送っても身体が感じる違和感はなくならない。美月は女でもあり男でもあるからだ。」

 

 

美月は中尾から見れば女であり、哲郎もそう感じてるし、美月の両親が美月は女なんだと感じるのは美月が男女という区別ではくくれない「メビウスの環」のような性をもっているからだと話す。

 

 

それは美月だけでなく、立石や香里にもあるのかもしれない、自分は彼らに新しい戸籍を与えたが、それが本当に意味のあることだったのかはわからない、だが彼らの秘密を守りたいと中尾は哲郎にお願いする。

 

 

哲郎は中尾に自首を勧めるが、中尾は自殺してしまう。

 

 

中尾は自殺するときに顔が判別できないように火をつけて海に落ちて死んだ。

 

 

警察は中尾の正体に疑問をもちつつも、あらゆる状況証拠から「神崎ミツル」なる人物が死亡したとして、戸倉の事件も犯人死亡で捜査は終了した。

 

 

東野圭吾「片想い」ラスト評価

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この小説が単なるミステリーとはいえません。

 

 

テーマは哲学者たちが2000年前から悩み続けている”存在”についてであり、人間とはどんな存在なのかを考えざるを得ない内容になっています。

 

 

殺人事件をきっかけとして使い、事件の謎解きをメインにせず、男性・女性という区別がなぜ必要で、なぜ多くの人はそれを当然のように受け入れいているのだろうか?という素朴だけど、普通に生活をしている限り悩む人はほとんどいない問題に焦点をもってきている点はさすがに有名作家だなと感心しました。

 

 

さて小説の流れは先程解説したので、最後にラストシーンであるエピローグの内容を書いておきます。

 

 

完全ネタバレですので、今さらですししつこいですが閲覧注意です。

 

 

 

ときはながれて卒業後毎年開催している11月のアメフト部同窓会の日がやってくる。

 

 

参加者の一人が中尾から世界を旅しているという葉書をもらったことを話題にする。

 

 

葉書には「我々は今アイスランドにいる・・・」という書かれている。

 

 

中尾と日浦は一緒に旅をしていると部員たちに葉書で知らせてきたのだ。

 

 

別の部員が「中尾は学生時代字が汚かったが、字がうまくなったな」と言うと、夏にも葉書をもらっていた別の部員が、その時は日浦の名前で葉書が着たと報告する。

 

 

部員たちは今回の葉書に二人で仲良く生きていると書かれていること、今回は中尾の名前だったけど日浦の名前で届くことから推測し、中尾の名前で日浦が書いたんだと予想する。

 

 

バツイチ同士上手く言っているんだなと部員達は納得し、10数年ごしの片想いが実ったことを喜ぶ。

 

 

しかし、事件の真相をしっている哲郎は片想いの意味が別の意味で正しいことを実感する。

 

 

中尾は事件を収束させるために離婚し、妻と子供との縁を切っていたので捜索願いなどは一切だされていないこともあり、中尾が自殺した事件の犯人であることは哲郎・理沙子・早田しか知らない。。

 

 

死体は神埼ミツルとして処理された。

 

 

事件現場で美月を載せた哲郎と理沙子の車は警察の検問に引っかかった。

 

 

美月の存在がバレれば、神崎ミツルが中尾ではないこともバレてしまうと哲郎はなんとかその場を逃れる方法を探すが見つからない。

 

 

すると事件を取材に来ていた体で早田が彼ら3人は自分が雇った助っ人だと警察に説明し、助けてくれる。

 

 

そのとき早田は美月を中尾と警察に説明、美月はコートから中尾の財布を取り出し、中尾の名刺を警察に突き出し、その場を離れる(いつ美月が中尾の財布を手に入れたのかは僕が読んだ限りではわからなかった。多分僕が読み飛ばしてしまったのだと思う。中尾と美月は彼が自殺する前の数時間一緒にいたが美月を警察に捕まらせないために中尾は美月を哲郎たちに引き渡した)

 

 

この時美月は中尾という男性の自分、美月という女性の自分両方を手に入れた。

 

 

だから美月は中尾と一緒に旅行をしていると部員に葉書で知らせてきた。

 

 

美月の性は、身体は現在は女性の身体だが、心は男という単純な切り分けはできない、というよりもすべての人間には男性であっても女性の心をもつ瞬間があると、この本は主張する。

 

 

美月は、ずっと自分の心は男だと思っているが、その美月には自分では気が付かない女の部分も存在する。

 

 

美月の性は身体が女で心が男だから、身体も男にして、戸籍も男すれば自分の中の違和感が消えるという簡単なものではない(美月だけでなく、性に違和感を持つ人すべてが単純に性を変えればすべてが解決するわけではないと本では推測している)。

 

 

もし男性に美月がなったとしても、美月の中の女の部分がその状態に違和感を感じる。

 

 

美月はどちらの性になりきろうとしても常に自分の性に違和感を感じてしまうのであり、それは一生かなわない自分の本当の性への片想いだ。

 

 

しかし、美月は自分が男性になりたいときは中尾になり、女性になりたいときは美月になることが可能な状況になって始めて自分の性の特性を理解し、自分の性への想いを満たすことができた。

 


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